Masuk「大智にはああ言ったものの、正樹さんとまたセックスするのか……。ホントは気が乗らないけど、しょうがない」
理論上、あの人に中出しされても着床するまでの四十八時間以内に大智の精を受ければ、身ごもる子供はあの人ではなく大智との子供になるらしい。……と頭では分かっているのだけれど、心の方はそうもいかない。これは実験じゃなく、あたしが生身でそうしなければならないのだから。
「……せめて、あの人がその気になるようなセクシーランジェリーでも身に着けとくかな。あたしも気分だけでもその気になれそうだし」
普段身に着けているような地味な下着では、その気になれないし……。そう思ったあたしは手近な商業ビルに入り、ランジェリーショップへ立ち寄った。
さすがに露骨にエッチなランジェリーは売られていないけれど、透け透けの下着はある。黒のレースがふんだんに
「ぅお…………。お前、それ……ダンナにも見せたのか?」 正樹さんだけでなく、大智もあたしのレアなセクシーランジェリー姿にゴクリと唾を飲み込んだ。「うん、見せたけど。……大智、これどう? あたし、変じゃない……?」「変じゃないよ。めちゃめちゃそそられるな。色もそうだけど、透けてんのがエロい。特に下の方が」「……あんまりジロジロ見ないで。実はちょっと恥ずかしいんだから」 あたしは顔をポッと火照らせて、ショーツの大事な部分を両手で隠す。 この下着はクロッチの部分以外は全体的に透けているのだけれど、そのクロッチ部分も普段穿いているショーツより極端に面積が狭いのだ。Tバックまではいかないけれど。 正樹さんの時は誘惑する意味もあったから堂々と見せていたけど、大智に見せるのはちょっと恥ずかしい。見られているだけで濡らしそうで……。「……とりあえず、汚すの申し訳ないからそれ、脱がせていい?」「いいよ。見せたかっただけだから」 あたしが頷くと、彼はまずあたしのブラのホックを外して取り去り、ショーツにも手をかけてスルスルと脱がせた。 そのまま裸になったあたしを優しくベッドの上に押し倒し、舌を絡め合う濃厚なキスを始める。「ん……っ、んん……っ」 彼は本当に、昨夜あの人とあたしがしたことの上書きをしようとしているみたいだ。同じ手順を踏むことで。「……里桜、教え
「――あぁっ、うぅ……んっ。はぁ……あんっ」 彼の腰の動きも相変わらず激しいながら、初夜の時よりよくなっている。ちゃんとあたしの感じやすいポイントを突いてくるようになったのだ。だから、あたしが漏らす喘ぎ声も決して演技ではなく、本物の快感から漏れ出ているものだ。「……そうか、里桜はここが気持ちいいのか。ごめんよ、里桜。初夜の時、俺は実を言うと初めてだったから……。君をどう抱いていいか分からなかったんだよ」「……………………」 今さらそんなカミングアウトをされて、どう言葉を返せと? しかもアンアン喘がされているこの状況で。 でも……そうか、この人チェリーだったのか。だからあんなに下手くそだったんだ、と納得はできる。一度目覚めた気持ち悪さは消せないけれど。「里桜……、俺は本当は君を愛しているんだ。だから、早くこうして君と繋がりたかった……」「……えっ? ……んっ、あっ……あっ。あ……あぁっ!」 彼自身の先端が、あたしの最奥部――子宮口のすぐ近くをズンと穿ってきた。そのままズコズコと奥の方を連続して突いてくる。……これはマジでヤバい! デキてしまう……! そしてあたしもそろそろ絶頂を迎えつつあった。「あ……、あ……っ! 正樹さん……、あたしも
髪をドライヤーで乾かしてから、あたしは寝室に戻った。「――正樹さん、お待たせしました。上がりましたよ」 自分でワンピースの裾をまくり上げてチラリと下着を見せると、彼がゴクリと唾を飲み込むのが見えた。「……じ、じゃあ俺も入ってくる……」 彼はバツが悪そうに慌てて視線を逸らし、バスタオルと着替えを持ってバスルームへ行こうとしたけれど、あたしにはチラッと見えた。彼の股間がちょっとモッコリ膨らんでいるのを。 別にあんな人を誘惑するのに成功したからって嬉しくはないけれど、ちょっとした手応えは感じた。 夫は三十分もしないうちにお風呂から上がってきて、熱を帯びた目で見つめながらベッドの上に座って待っていたあたしをせかせかと押し倒した。「……服、脱がせていいかな」「ええ、どうぞ」 性急な手つきであたしのワンピースを脱がせた正樹さんは、初めて見るあたしの色っぽいランジェリー姿にもう一度喉を鳴らした。「……里桜、その下着は」「今日、新しく買ったんです。この時のために。……どうですか? あたし、変じゃないですか……?」 あたしは正樹さんを誘惑しながら、こんなことを言う自分に少し酔っていた。明日、大智にも同じようにしてみよう……。「いや、変じゃないよ。むしろ、たまらなくそそられる……」 彼の目に宿る熱が、少し強くなった気がする。それだけ、あたしに欲情しているということだ。&
それはともかく、洗濯してしまったら決定的な証拠が消えてしまうので、あたしはワイシャツに付いた口紅をスマホで撮影して写真を保存してから、自分の洗濯物と一緒に洗うことにした。 あの人、けっこう抜けてるんだな。こんなもの洗濯してしまえばバレないとでも思ったのか。一体その洗濯はいつも誰がやっていると思っているんだか。……昨日はズルしたけども。「ふふん♡ 主婦を甘く見るなっつうの」 本気になったあたしの恐ろしさを思い知るがいい。あとの証拠もちゃんと保管しておいて、離婚の切り札として使わせてもらうんだから。――お互いに不実を働いたんだし、これで条件はお互いさまじゃないだろうか。 ――夕食は冷蔵庫の中にあったカレーの残りと作り置きされたおかずで済ませた。出張帰りの正樹さんはそれでも文句を言わずに「美味い美味い」と平らげてくれ、食後のデザートとして二人でうなぎパイを食べた。 さすがは『夜のお菓子』といわれるだけあって、食べた後ほんのりと体に熱がこもったような気がする。まさか媚薬なんか仕込まれていたりしない……よね? その後はしばらく夫の土産話に耳を傾けつつ洗い物を済ませて、リビングで寛ぐ夫に向き合った。「……あの、正樹さん。あたし、明日出かけてきてもいいでしょうか? 今の職場でできたお友だちから、一緒に遊びに行こうって誘われてて。帰りにスーパー銭湯にも行きたいって言ってたので、帰りは夕方になると思うんですけど」 行き先にスーパー銭湯を挙げたのは、とっさの思いつきだ。彼の部屋に行った後、ボディソープの香りがした時の言い訳として使えるかなと思ったのだ。「……別にいいが。
「……ん……んっ、あ……っ♡ あっ、あっ♡」 しばらく布越しに肉芽を刺激してオナニーしていたけれど、時間がもったいない。「んんっ、こんなことしてる場合じゃ……。早くイっちゃって続き書かなきゃ……。――あぁ…………んっ!」 最後はショーツの中に手を入れて、蜜に濡れたクリを直接刺激することで達した。「……はぁ、ちょっとスッキリした。さて、続き続き」 汚れた指をテーブルの上に置いてあったウェットティッシュで拭い、パンツのファスナーを上げ直してまたキーボードを叩き始める。 その後は筆が進みに進んで、二日分の六千字を一気に書き上げてアップした時にはもう四時前だった。そろそろ正樹さんが帰ってくる。 パソコンをコンセントから引っこ抜き、通勤用バッグに突っ込んで寝室に持っていくと、タイミングよくドアチャイムが鳴った。ふー、ギリギリセーーフ!「――ただいま、里桜」「おかえりなさい。出張、お疲れさまでした。――バッグ、預かりますね」 あたしは愛想よく夫を出迎え、ボストンバッグを受け取る。彼はあたしにビニール袋を差し出した。お土産らしいけれど、一体どういう風の吹きまわし?「……あの、正樹さん。これは……」「土産を買ってきたから、食後に一緒に食べよう。浜松の銘菓だ」
「大智にはああ言ったものの、正樹さんとまたセックスするのか……。ホントは気が乗らないけど、しょうがない」 理論上、あの人に中出しされても着床するまでの四十八時間以内に大智の精を受ければ、身ごもる子供はあの人ではなく大智との子供になるらしい。……と頭では分かっているのだけれど、心の方はそうもいかない。これは実験じゃなく、あたしが生身でそうしなければならないのだから。「……せめて、あの人がその気になるようなセクシーランジェリーでも身に着けとくかな。あたしも気分だけでもその気になれそうだし」 普段身に着けているような地味な下着では、その気になれないし……。そう思ったあたしは手近な商業ビルに入り、ランジェリーショップへ立ち寄った。 さすがに露骨にエッチなランジェリーは売られていないけれど、透け透けの下着はある。黒のレースがふんだんにあしらわれた濃い紫色の上下ペアの下着なんか、ちょっと妖しげでエロいかもしれない。これを身に着けている自分を想像しただけで、本人だけれどドキドキしてくる。相手が大智ならもっとよかったけど、それは明日実現するからまぁいいか。 マンションへ帰ると、まずは証拠隠滅。ボストンバッグから一つにまとめておいた汚れ物を洗濯機に放り込み、バッグをまたあたしの使っているベッドの下に隠す。どうせあの人は洗濯機なんて気にもしないので、バレることはないだろう。あの人の洗濯物も一緒に洗ってしまえば問題はない。 そして、買ってきたセクシーランジェリーのセットを下着の入っているクローゼットの抽斗の一番手前に入れておき、すぐ出せるようにしておいた。今夜、入浴後にこれを着けるのだ。「今日、夕食はどうしようかな……」
――それから一週間後。今日は大智が社長を務める〈株式会社Oプランニング〉の入社日、あたしにとっては新しいスタートの日だ。「よし。メイクも完了したし、社員証もちゃんと入ってるし、忘れ物もなし。じゃあ行くか」 時刻は朝の九時半。細身もパンツスーツに身を包んだあたしは、バッグのポケットに出来立てホヤホヤの社員証が入っていることを確認して家を出る。 正樹さん
「ああ、引き留めてゴメン。……里桜、いい返事期待してるから」 彼の会社に入ること、彼の側にまた戻れること。……あたしには何の躊躇もなくなっていた。「うん」「――支払いはオレがしとく」 大智がそう言うので、あたしは彼の厚意に素直に甘えることにした。 カフェを出ると、普段からよく買い物をしている高級スーパーで夕食の材料を買い込み、急いでマンションに帰った。〝マンション〟とはいっても、あたしと正樹さんの夫婦が住んでいるのは三十五階建て・オートロック付きの超高層マンション。ちなみに賃貸ではなく、藤木グループの持ち物である。 スーパーの店内で
「……そうか。じゃあ、メシにしてくれ」「はい」 ぐうの音も出なくなった正樹さんに向かって、あたしは内心ガッツポーズをした。 ――夕食後。キッチンで洗いものを終わらせたあたしは、リビングでタブレットをいじっていた正樹さんに転職話をぶつけてみた。「正樹さん、大事なお話があるんですけど」 彼は「何だ?」とも何とも言わず、リビングに戻って立ったままでいるあたしに視線だけで応える。あたしは構わずに話を続けた。「あたし、転職しようと思ってるんです。知り合いが少し前に始めた会社があって、今日『手伝ってほしい』って誘われて。正社員待遇なんですけど」 彼が次に何を言うのかはもう予想がついている。
「それでいいよ。あたしにできることだったら何でも手伝う」 ――というわけで、初日のあたしの仕事が始まった。まずはメンバーのみなさんから集まったという提案書をまとめて、アンケート用紙を作ることから始める。他にも、取引先に提出する企画書の最終チェックとか、かかってきた電話の応対とか。 他の人の端末に不具合が出た時は、その復旧方法を教えてあげたりとか――あたしもプロというわけではないので、分かる範囲で、だけれど。 仕事用には、ちゃんと自前のノートパソコンを持ってきている。普段、ネット投稿用の小説を執筆しているパソコンだ。 * * * *「――里桜、腹減ったな。一緒に昼メシ行かねぇ?